診療グループ
口腔顎顔面病態学講座 口腔顎顔面外科学分野では、診療グループは4つに分かれています
口唇口蓋裂グループ
口唇口蓋裂とは唇や上顎が割れた状態で生まれてくる先天的な口の病気で、日本人の約400〜600人に1人の割合で生まれてくるといわれています。原因は明らかになっていませんが、適切な時期に適切な治療を行うことで、良好な治療効果が得られます。
口唇だけに裂が認められる場合(口唇裂)や、上顎や口蓋部にも生じる場合(唇顎裂・口唇口蓋裂)もあります。さらに、口唇裂や口蓋裂が単独で存在する場合や、左右どちらかに生じる片側の場合や両側の場合など様々な裂型があります。
口唇口蓋裂の治療は、患児の成長に合わせて治療介入を行っていく一貫治療となります。まず出生後6か月ほどで口唇裂の行い、生後1年から1年半ほどで口蓋裂の治療を行います。その後は成長発育状態を診ながら、言語訓練などを行っていきます。学童期に入ると矯正歯科や小児歯科と連携して、歯列発育や咬合状態を診ながら、8,9歳ごろに顎裂部の骨移植手術を計画していきます。以前は自身の腸骨(腰の骨)を用いることが主流でしたが、近年は人工骨移植が適応となる症例も増えています。骨移植後には矯正治療を再開し歯並びを整えていき、顎骨の成長発育が少なくなっていく20歳ころまでフォローアップを続けます。必要に応じて、鼻や口唇の修正手術も行うことがあります。また、成長するにつれて上下顎のバランスや咬合状態の不調和がみられる場合には、通常の矯正治療に加えて、外科矯正手術も検討していきます。良好な顎顔面形態や咬合状態を獲得することが最終的な治療のゴールとなります。
顎変形症グループ
顎変形症とは発育の過程で上顎骨や下顎骨の位置や形態に異常を生じ、咬み合わせの異常や顎顔面形態の不調和をきたす疾患です。
その原因は遺伝的要因のみではなく、幼少期の指しゃぶりなどの習癖、口唇裂・口蓋裂のような先天疾患や内分泌系疾患、顎骨腫瘍や外傷に伴う二次的なものまでさまざまです。
治療法
歯が並んでいる顎の骨の位置や形態の異常に起因することから、通常の矯正治療だけでは十分な治療結果が得られない場合も多いです。そのため、必要に応じて顎骨を手術で移動させる外科的矯正治療が行われます。
当科では、手術前にシミュレーションソフトで3次元での分析を行い、当院矯正科と連携して手術計画を立案しています(図1)。
また、手術の時に目的の位置に骨を移動させるために、スプリントという咬み合わせを印記したプレートを準備しますが、その際にもシミュレーションを行ったデータを用いることで、より精度が高く、再現性も優れている CAD/CAMスプリントを作製しています(図2) 。

術前に行ったシミュレーションソフトでの3次元分析

シミュレーションデータから作製したCAD/CAMスプリント
腫瘍グループ
口腔領域での悪性腫瘍は、粘膜上皮から発生する扁平上皮癌が大多数を占め、その中でも舌癌が半数を占め最も多くなっています。
治りにくい口内炎や腫瘤には注意が必要ですが、口の中の病変は、観察しやすく早期発見が可能な領域でもあります。しかし、進行してしまうと舌や顎骨の切除に伴い様々な機能が失われてしまいます。
そこで、顎口腔外科や耳鼻咽喉科および形成外科の腫瘍グループと連携して、患者さんに最適な治療を提案し、外科的治療を中心に行っています。下顎骨に及ぶ腫瘍の切除は、区域切除(骨のブロック切除)となるケースもありますが、舌側または頬側皮質骨を残した切除を行い、顎骨および神経の温存に取り組んでいます。また、舌半側切除以上の再建手術症例に対しては、多種職からなる嚥下チームとの連携で、嚥下および構音機能の回復にも努めています。
インプラントグループ

当院では歯科インプラント治療を包括的に行う再生歯科インプラントセンターがあります。
多くの大学病院ではインプラント科が単独で存在していますが、当院は複数の科(補綴科、口腔外科、歯科麻酔科など)をまたいで再生歯科インプラントセンターを運営しているため、各科のスペシャリティを活かし、より安全で高度なインプラント治療を提供することができます。
特に、当口腔外科は通常のインプラント埋入手術に加え、骨造成やサイナスリフト、自家骨移植、口腔軟組織形成などの高難易度のインプラント外科を担当します。また、口腔癌や口腔腫瘍の治療のため大部分の顎骨を切除し顎骨再建を行った症例に対してのインプラント治療(広範囲顎骨支持型装置)についても、原因疾患から一貫して治療にあたることができます。
九州大学病院 顔面口腔外科の臨床
病棟
病棟では入院を要する患者の治療、マネジメント全般を担います。
手術日は週に3.5日あります。顎変形症、口唇口蓋裂、口腔悪性腫瘍、顎顔面外傷、炎症などに対して手術を行っています。術後の患者のバイタル、顔色、創部の状態に加えて、非言語コミュニケーションなどから変化を察知し、速やかに対応する能力を身に着ける必要があります。乳幼児期から高齢者まで幅広い患者それぞれの状態に対応するために、他科とのコンサルテーションや安全管理も重要な仕事です。
口腔は咀嚼や構音の機能を担っています。治療後の口腔機能の回復に関しては、看護師、管理栄養士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー等と連携しながら個別に支援を行っています。
毎週金曜日には顎口腔外科と合同で手術検討会を行っており、1週間の手術と翌週に予定されている手術について、ディスカッションを活発に行っています。
外来

口腔外科は、一般的な歯科医院で行う虫歯や歯周病の以外の口腔顎顔面領域の疾患を扱う診療科です。親知らずの抜歯や嚢胞の摘出といった小手術から、腫瘍、外傷、炎症、顎変形症、口唇口蓋裂などの治療などその範囲は多岐にわたります。また、口腔外科という名前からは外科的治療(=手術)のみを行なっているという印象を受けるかもしれませんが、口腔粘膜疾患や顎関節症など口腔内科的疾患の診察・治療を行う割合も少なくはありません。
かかりつけ医など地域医療機関や院内の医科・歯科を含めた他科との綿密な連携を図ることで、より良い医療を提供できる体制を築くことを心がけております。手術に対する不安や恐怖心が強い場合には、静脈内鎮静法や全身麻酔、入院下での手術も可能ですので遠慮なくご相談下さい。
主な対象疾患
- 埋伏歯抜歯や嚢胞/良性腫瘍摘出などの小手術
- 炎症(智歯周囲炎・顎骨骨髄炎・歯性上顎洞炎など)
- 外傷(顎骨骨折・歯牙脱臼・口腔顔面外傷など)
- 顎変形症(上下顎前突/後退症・顔面非対称など)
- 口唇口蓋裂(唇裂・顎裂・口蓋裂など)
- 口腔悪性腫瘍
- 口腔粘膜疾患(口内炎、扁平苔癬、口腔カンジダ症、口腔乾燥症など)
- 顎関節疾患(顎関節症、顎関節脱臼など)
- 唾液腺疾患(唾液腺炎、唾石症など)
外来診療日
診療日 : 月〜金 8:30〜17:00(再診は予約制)
休診日: 土・日・祝日、年末年始
初診受付: 月〜金 8:30~11:00(歯科総合予診 予約受付 092-642-4429)